出張とあいさつ回り

退職のあいさつ回りで福岡に行った。

この一年、毎月のように訪れたこの街に泊まる、最初で最後の出張となった。その晩、一緒に仕事をしてきたO社のKさんとOさんと、初めて酒席を共にした。僕を気遣い、日付が変わるまで付き合ってくださった上、ごちそうまでしてくれたKさんとOさん。近々退社する人との酒席なぞ、接待というより送別会という心持ちだったに違いない。申し訳なく、けどとてもありがたい。

僕は、よほどのことがなければ取引先の人たちとの飲み食いは控えるようにしてきた。それは、僕がそういう席が苦手だったというのもあるし、出張先で偶然入ったお店で、カウンター越しの店主やたまたま居合わせた人との会話の方をむしろ楽しんでいた、というのもある。

宿泊をともなう出張が招きがちな風評を意識しなかったわけではないけれど、それよりもやっぱり、この感染症が拡がってから、よそ者がカウンター越しの店主やたまたま居合わせた人と話をすることができなくなって、僕の出張は自動的に日帰りになっていった。

翌日、持て余した時間で僕は初めて太宰府天満宮をお参りし、隣の九州国立博物館に立ち寄った。スケジュールの合間の余った時間で地域のスーパーやギャラリーなんかを巡り、夜は地元の居酒屋で過ごす。そういえば感染症が拡がる前、たしかに僕はそんな出張スタイルを築いていた。今さらだけど、そんなことを思い出した。

新しい勤務先で出張の機会をつくることはできるだろうか。

できるといいな。

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